たった一本の電話をかけるだけ。それだけ。
朝、気が重かった。
理由は明白。職場に電話をかけなければならなかったからだ。
ただそれだけなのだが、私にとっては重大なイベント。
何日も前から、電話をかけると思うと、不安になり、怖くなり、頭の思考全てが支配されていた。
たった一本の電話、されど一本の電話。
朝起きて、気を紛らわせようと普段通りにしてみようとする。朝ごはんも喉を通らなかった。
9時。電話をかける時間が来た。
練習は何回もした。きっと大丈夫。
自分に言い聞かせる。
職場の番号を探す視界がボヤける。涙が出てきていた。怖い、怖すぎる。何故こんなに怖いのか。
勇気を出す。
「お疲れ様です、うつ本です。
この前の書類の件で、、、あの、、、」
噛むし、どもった。あれほど練習をしたのに。
「え?なんて?」
聞き返される始末。
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どうにか電話を終えることができた。噛むし、どもるし、聞き返されるしで、正直、最悪だった。
でも、心の不安はスッと何処かに消えてきた。
自分が思っていたよりも、ずっと、電話をかけることは、怖いことではなかったのかもしれない。
自分の中で物事を大きくしてしまって、勝手に不安になって、勝手に落ち込んで、勝手に苦しんでいただけなのかもしれない。
だが、、、それにしても疲れた。体力を持っていかれた。
たった一本の電話くらいで。
悔しいなぁ。このくらいで。
きついなぁ。苦しい。
もっと強くならなきゃなぁ。